みなさん、今日はちょっと休憩です。
今までとは、少し違う内容なので、参考として、覚えておいてください。
人が話をするとき、そこには3つの要素があります。
一つめは、話し手。
二つめは、聞き手。
三つめは、言葉。
人が、だれかを説得しようとする場合、この三つの要素に合わせて、三つの種類に分けられます。
これは、アリストテレスが分類したもので、以下の様になります。
1.話し手のエトス (etos)
2.聞き手のパトス (patos)
3.言葉のロゴス (logos)
「エトス」とは、簡単にいうと、信頼性や権威のことです。
「この人の言うことだから信用しよう」「あいつの言うことは信頼できない」というのは、話し手のエトスによって、聞き手が判断をしているわけです。
また、「偉い先生が言っていた」というのも、エトスによる説得と言えるでしょう。
「パトス」とは、簡単にいうと、感情、つまり“気持ち”のことです。
「あなたが怒る気持ちは良くわかります」「私を気の毒とは思いませんか」というのは、聞き手のパトスに、話し手が訴えているのですね。
もう少し細かく言うと、喜怒哀楽などの感情だけでなく、相手の心理的な欲求に応えることも、パトスによる説得に含まれるでしょう。
「あなたが立派な人物であることは、よく知っています」という言葉は、相手の“自尊”の欲求に訴えているのです。「私は敵ではありません」というのは“安全”の欲求ですね。
「ロゴス」とは、ロジック (logic)、つまり論理のことです。
私が、今まで「科学の子」で述べてきたようなことですね。
(「科学の子」は、もう少し続ける予定です。もちろん“論理”にかかわる話です。)
エトス、パトス、ロゴスの三つは、実際のコミュニケーションでは、明確に区分けできず、渾然一体となっています。
例えば、「生物学的に見ても、人類学的に見ても、我々は優れている」という言葉は、“生物学”“人類学”という言葉のエトス、「我々は優れている」という聞き手の“自尊の欲求”=パトス、それぞれを含んでいます。
この言葉を、大学の教授が言ったとして、「なぜならば・・・」と続けたとします。すると、“大学の教授”というエトスがさらに加わり、後に続く言葉はロゴスなのでしょう。
そして、これらが渾然一体となっているからこそ、他人を説得することは、難しいのです。
いくつか、説得がうまくいかない場合を、例示してみましょう。
A「1+1=2であることは、数学的に証明された事実だ」
B「私は、その証明は知らないが、あなたの言うことは信頼できません」
A「彼らは、わたしに、こんなひどいことをしたのです」
B「あなたのいう“ひどいこと”は、法律で認められています」
A「・・・以上によって、私の主張は正しいと考えます」
B「あなたの事は尊敬しているが、あなたの主張は、私を悲しい気分にさせるので、認めたくありません」
それぞれ、何が問題だったのか、考えてみてください。
同様に、自分が誰かを説得しようとしてうまくいかなかった時も、エトス、パトス、ロゴスの何が問題だったのかを、考えてみると良いでしょう。
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